鳥海山千畳ヶ原 ~朝陽に輝る草紅葉~
予(かね)てから行ってみたいと思っていた鳥海山の千畳ヶ原。
今年は7月に鉾立から登っている鳥海山なので、一年に二度は贅沢かなと思いつつも、シルバーウィークを利用して体調を十分整えた状態(毎日、昼寝してただけですけど・・・・・)で、行ってみた。
7月の模様はこちら⇒雨を逃れて鳥海山へ ~花があるから頑張れた~
福島から湯の台登山口を目指す。今回も一般道で・・・・・。国道4号で福島県を脱出。その後、白石、秋保、作並、関山トンネル、東根、新庄、清川(庄内町)等を経て、国道345号へ。北へ向かい酒田市観音寺(旧八幡町)から「湯ノ台温泉」や「鳥海高原」の標識を頼りに向かい、最終的には「滝の小屋」の標識を見つけて進む。
今どき、カーナビもETCも装備してもらえず、長時間の労働をさせられるばかりのマイカーが可哀想に思えてくる・・・・・そんぐらい遠い道のり。

九十九折の道を行くと右手に建物(トイレ)があって、ここが行き止まり兼駐車場(45台)兼湯ノ台登山口(標高約1,200m)です。
途中、某所で車中泊してたけど、寒さで目が覚めそのまま出発。ここへ辿り着いたのはまだ暗い中でした。最低気温一桁の季節になりましたので寒さ対策お忘れなく。
ヘッドランプを点けて発たれる登山者が居る中、明るくなるのを待ち、準備して予定より30分早く出発(5:30頃)。


最初は石畳の道、その先には寝ぼけ眼(まなこ)だと踏み外しそうな板の橋。
目を擦(こす)りピントを合わせてからスリップに注意して渡る。少し行くと滝の小屋(トイレ有)に着く。

立派な小屋の前を通過して間もなく背後から光を感じ、寝起きの悪そうなもやもやっとしたお天道様にご挨拶。機嫌を伺うように小声で「おはよーございまーす」。
この先、湯の台温泉からの道と出合い、八丁坂に差し掛かる。

八丁坂は岩が多く、小刻みな九十九折状の道です。
傾斜は一定なので「ズンチャッチャ、ズンチャッチャ~♪」とリズム良く歩けば越えられます・・・・・多分。(通知表で音楽は万年「2」を確保してた自分がリズムを口にした時点で信憑性は無い。)
何度か振り向いて下界に霞む庄内平野や日本海、この日は内陸側の雲海も楽しみながら登りました。

坂を登りきり、道が平坦になると、目の前にドーンと外輪山。
朝日を浴びたその姿に圧倒される。

河原宿に着き小休憩。
右が河原宿小屋、左がトイレ。

休憩後、河原宿から左(北西)に折れて、月山森、千畳ヶ原方面へ向かう。

日が高くなるに連れ、紅葉の色合いがはっきりしてくる。

河原宿までは前後に人の気配を感じながらの歩きだったけど、こちらの道ではそれを感じない。
僅かに聞こえてくるのは「チッチッチッ・・・・・」と野鳥のさえずり。「トンットンットンッ・・・・・」って木道を歩く音がはばかられるくらいに静か、・・・・・風も無い。
木道ならぬ黙道と化す。

キラキラ光りだした草紅葉の木道を行くと月山森が見えてきた。
この先にその月山森への登り口が有り、今歩いてきた道を上から眺めたくなったけど、先は長いのでスルーして進む。

季節はずれのニッコウキスゲ。
見つけたこちらは「当たり!」の気分。

道が下り始める頃、扇子森(右)や鍋森(左)が見えてくる。
又、新たな風景に向かって歩ける喜びで、思わずニターっと笑ってしまう。
その横顔は光と影のコントラストも手伝って、悪代官が饅頭の下に大判小判を見つけた瞬間のあの笑顔に匹敵してた筈・・・・・。「フッフッフッ、鳥海屋、お主もなかなかやるのぉ。」
話が大きく反れて、悪代官じゃなくて、甚だ遺憾!

少し下りて行くと、眼下に千畳ヶ原が広がり、「うっわぁー!」って感動も広がる。
しばらく足が止まる。景色への感動もあるけど、これから下る「幸治(次)郎沢」の上に立っている訳で、高度感に慣れてる最中です。

これが幸治(次)郎沢。
大きな岩が積み重なった急斜面です。
まだ日の当たらない冷たい岩と握手してコミュニケーションを取りながら、出来るだけ段差の少ないステップを探して降りて行きます。
※雨天時や雨天直後、これからの凍結期は、大変危険だと思いますのでご注意下さい。
当初、外輪山へ登り、帰りに千畳ヶ原を経てこの沢を登る逆コースの予定でしたが、先日、雁戸山でお会いしたHITOIKIさんに「歩き疲れた後に幸治郎沢を登るのは大変なので、先に降りたほうが良いのでは」とアドバイス頂き、その通りにさせてもらいました。
下まで降りて見上げた幸治郎沢は、登る気力を奪う迫力でした。HITOIKIさんのアドバイスが無ければとんでも無い事になってたなーと思い、改めて感謝申し上げます。「ありがとうございました。」
HITOIKIさんのサイトはこちら⇒HITOIKI Blog

幸治郎沢を終え、もう一本沢を渡り木道へ。

千畳ヶ原突入!

その前に振り返り、幸治郎沢。
少し離れるとあまり険しさを感じない。なのでここを登られる方は油断して辿り着き、直下から見上げた岩の斜面に行き場を失うかも・・・・・。
しつこいようですが、お気をつけ下さい。
ここから千畳ヶ原を楽しむ~♪

草紅葉の向こう、稲穂で同じ色に染まる庄内平野。

笙ヶ岳
あの上も何時かは歩いてみたい。

憧れていた場所に来て、ゆっくり歩けば良いものを、うれしさのあまり軽やかな足運びであっと言う間に通り抜けてしまう。
「来て良かった・・・・・、来れて良かった・・・・・。」

一点、イメージと違ってたのは沢が何本か有り、そこに差し掛かる度に小さなアップダウンを越えなくてはいけない事。
でも、そんな事はちっとも苦にならないほど、素晴らしい千畳ヶ原の景色です。

草紅葉の風景を見ていると、体も心も軽くなりやがて風になる。この草原を上から眺めながら、扇子森へと達する・・・・・・・気持ちだけは。

二の滝口からの道と合わさる、丁字分岐。
この少し手前で、御室に宿泊されて湯の台へ向かう方と挨拶を交わす。この後、もうお一方と出会い、河原宿から御田ヶ原の分岐までに会ったのはこのお二人だけでした。

小休憩して地面に寝転がる。
気分は千畳ヶ原の「一畳」。
草の上ならともかく、砂利の上では・・・・・、寝心地は自宅の畳の方が上の様だ。

休憩後、歩いてきた道をもう一度歩きたくなったけど、グッと堪えて外輪山を右に見ながら先へ進む。

扇子森方向へ進んで行きますが、写真中央ちょい左辺りの「蛇石流(じゃいしながれ)」の所でルートミス。

その場所がこちら。
手前からトントンと石段を上がり、そのまま沢(蛇石流)を進んだらブッシュ(藪)に・・・・・「アレレ・・・」、少し戻り二又に分かれた沢を行こうとするも苔むした岩で「アレレ・・・」。気づいたら目印が見当たらないので「アレレレレ・・・」。すごろくで言うところの「一マス戻る」。
ここは石段を上ったら左岸へ渡るのが正しいので、目印の見落としに注意して歩きましょう。

シロバナトウウチ(トウチ)ソウ(白花唐打草)

鳥海湖へ向けての木(石)段
気温はジワジワ上昇中、歩くペースはダラダラ下降中。

鳥海湖(鳥ノ海)と扇子森

御田ヶ原(八丁坂分岐)へ向かう。
新山の頭が見えた。

月山森
山頂右上に薄っすらと月山が見える。
歩いてきた道と幸治郎沢も確認できる。


御田ヶ原(八丁坂分岐)
鉾立から御浜を経て来る本線的な道と合流。ここで秋田方面の景色が目に飛び込んでくる。右に折れ山頂方向(東)へ向かう。
この先は人と多数会う賑やかなコース。

整備された道でも落石には注意!
自然は人間の予想を超える現象を引き起こす。

笙ヶ岳と庄内平野と日本海

七五三掛
前回の反省(ここで休憩せずに通過して途中バテバテ・・・)を踏まえて休憩にします。

休憩後、進行開始。
この先、千蛇谷コースと外輪コースの分岐が有ります。
今回は鼻っから新山へ行く気は無かったので外輪コースへ入ります。
分岐周辺の登りはちょっときつい・・・・・。
※七五三掛から分岐の少し先の外輪コース側へ新道建設中でした。

振り向くと稲倉岳の眺めが抜群!
後ろに秋田県側の景色が広がる。

ハイマツの登山道を行くと、目の前にこの御鳥様。
前回も何度か現れた。近づいてもなかなか逃げない・・・・・、よく見るとムッとした表情をしている。もしかして縄張に入った人間を威嚇してるのかも知れない。こちらはにらめっこかと思い渾身の変顔をしたのに・・・・・。

文殊岳(標高2,005m)に着き、またまた休憩しながら360°の展望を楽しむ。
千畳ヶ原の木道など、歩いてきた道のりがグルっと確認できたけど、地図上にある標高2,000mの太い等高線は確認できなかった・・・・・ハァ?

これから歩く外輪山と左の谷底が千蛇谷。
7月に見た千蛇谷を埋めていた雪渓は殆ど無くなっていた。
途中出会った秋田のベテランさんのお話では、昔はここの雪は万年雪で、解ける事は想像できなかった、との事。残念そうに語る姿が印象に残るとともに、歯止めが利かない温暖化の怖さを感じた。

登っても登っても次から次に新しいピークが見えてくる外輪山。
救いは涼しい秋の風。

こんな場所もあったりして、少しづつ体力を奪われる。

遥か下のほうに歩き始めた湯ノ台口の駐車場が見えた。
間もなく向かえる分岐から「戻ろうかな?どうしようかな?」と、時計を確認したら想定してた通過時間より30分早いので(30分早目に出たので当たり前ですが・・・)予定通り七高山へ進む。

振り返って千蛇谷

七高山
小さくなった残雪が歯に見えて、七高山がさんまさん(明石家)ぽく映った。気のせいか?

七高山山頂(標高2,229m)\(^o^)/
キョロキョロしながら休憩に入る。

お隣の新山(標高2,236m)
次々と登山者が訪れて賑やかな山頂。

稲倉岳
独特な山容に引かれてしまいますが、今では冬季しか登れないとか・・・・・。


バラバラバラバラ・・・・・「何か来た」、どうやら最近話題のドローン・・・・・ではないようで、帰宅後調べたところ、山形県消防防災ヘリ「もがみ」らしいことが分かった。ただ、救助なのか訓練なのかは不明です。
ヘリも見たし、日本海も見たし、庄内平野も見たし、横手盆地も見たし、遠くの山々も見たし、お腹も満たし、ん?、満足したので下山しますか。

外輪山を戻ります。


イワギキョウ(岩桔梗)

新山、御室、七高山とはそろそろお別れ(^_^)/~~~

伏拝岳の分岐から湯の台へ戻ります。

石のサイズからして歩きずらそうな道。あざみ坂に入る。
登ってくる方とスライドするが、日の高くなった時間帯にここの急坂を登るのはかなり辛そうで気の毒に思えた。
あざみ坂と幸治郎沢、今回両方とも下るコースだったけど、反対コースで登りだったら・・・・・、そう考えると、一日では戻れない自分の姿が浮かびゾッとした。

膝に負担のかかるあざみ坂。時折足を止め、点々状態の心字雪渓を見下ろしたり、帰りのルートを確認しながら下る。

あざみ坂が終わると、大きな岩のゴロゴロした場所に出る。
黄色いペイントやピンクリボンの目印を追うが、途中から二手に別れたりしててちょっと不安に・・・・・。恐らくは夏道用と残雪期の雪渓用だと思います。幸いこの天気で遠くまで見渡せたので問題無く歩けましたが、ガスると戸惑うかも?

最近まで雪渓の下だったと思われる、岩々の沢を見上げる。
この辺りで、少し前をしっかりした足取りで歩く方(途中で抜かれて先行された方)にどうにか追い着く。
下る毎に暑さを感じて、このままだとペースダウンしてダラダラっとした歩きになりそうだったので、この方の後ろに付かせていただく。
お話を伺うと新潟からお越しでキャリア20年の方。足の運びに無駄が無く、後ろを歩くだけでも勉強になりました。その上、山だけでなく人生のためになる話を聞かせていただいたり、自分の初歩的な質問にもお答えいただいたりと、有意義な歩きとなりました。
こんなヘッポコブログ上で失礼ではありますが、本当にありがとうございました。

雪渓の傍を歩くと、涼しい風を感じて体力回復。
この後、何度も何度も振り返り、外輪山を眺めた。

岩がいっぱい外輪山。

雪渓と紅葉の外輪山。

河原宿から外輪山。

滝の小屋と外輪山
新潟の方にずーっと引っ張って頂いて(迷惑を掛けて)、予定より1時間も早く登山口に戻れました。
御礼とお別れの挨拶をして、車へ戻り帰り支度して帰路へ。

駐車場の一つ下のカーブからもう一度、鳥海の雄姿を見上げ再訪を誓います。
麓の町まで戻り、八森温泉ゆりんこ(¥450)で汗を流し、庄内平野の道をサイドミラーに鳥海の姿を探しながら未練たらたらで帰りましたとさ。
目蓋を閉じれば「千畳ヶ原の草紅葉」が浮かぶ、そんな状況がしばらく続きそうです。
~おしまい~
行ってみた日 2015.9.23
この日の行程
湯ノ台登山口⇒(15分)⇒滝の小屋⇒(45分)⇒河原宿(休憩5分)⇒(20分)⇒月山森分岐⇒(60分)⇒丁字分岐(休憩10分)⇒(35分)⇒鳥海湖⇒(20分)⇒御田ヶ原⇒(15分)⇒七五三掛(休憩10分)⇒(35分)⇒文殊岳(休憩5分)⇒(25分)⇒伏拝岳⇒(25分)⇒七高山(休憩45分)⇒(25分)⇒伏拝岳⇒(60分)⇒河原宿⇒(30分)⇒滝の小屋(休憩5分)⇒(15分)⇒湯ノ台登山口
以上8時間25分(休憩1時間20分含む)の行程でした。

地理院地図(電子国土Web)より

地理院地図(電子国土Web)より
国土地理院のサイト⇒地理院地図(電子国土Web)標準地図(25000)鳥海山
関連サイト
鳥海山登山ガイド
遊佐鳥海観光協会
酒田観光物産協会
にかほ市観光協会
由利本荘市観光協会
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